宮塚春美による個展「響きの彼方」を開催いたします。

本展では、作家が2025年に参加したオーストリアでの滞在制作をもとに生まれた新作を紹介します。

舞台となったウォルフガングは、音楽史に名を刻む作曲家ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの名を冠する湖畔の町。

アルプスの雪山と湖に囲まれた静謐な環境の中で16カ国22名のアーティストたちと共に過ごした日々は、まるでひとつの交響曲のように多彩な響きを内包していました。宮塚はそうした時間の「余韻」や「音のない響き」を絵画というメディアでの表現を試みた作品を描きました。

異なる文化、異なるリズム、そして異なる沈黙のなかで立ち上がる感覚。それらを重ね合わせた作品群は、音楽のように抑制の中に感情の深さをたたえ、鑑賞者の内面にそっと触れてきます。タイトルの「響きの彼方」は、土地に刻まれた音楽の記憶と、そこに吹いた風が形を変えて遠く離れた日本へと届く過程を象徴しています。

静かな画面の奥に響くもの──それは音でも言葉でもなく、空気のように、記憶のように、滲む存在です。

ぜひこの機会に、ヨーロッパの地で紡がれたもうひとつの「響き」に触れていただければ幸いです。

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